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ああ、最終回が一刻、こく一刻と近づいている…。
-「罪と罰」後-
「んーっ、美味しかった♪ すみませーんっ」
可奈は、最近すっかり行きつけとなった喫茶店でいつものパフェを食べていた。
ぺろりと1つめをたいらげ、すぐにおかわりを注文する。
向かいに座る想は、店に入ったときに注文したコーヒーを飲んでいた。
まだ半分しか減っておらず、冷めてもいない。
その小さい体のどこに入るのか、燈馬は不思議な気持ちで可奈を見ていた。
「お待たせ致しました」
ほどなくして、新しいパフェが運ばれてくる。
可奈は再びスプーンを手にし、嬉しそうに2つめのパフェを口に運ぶ。
「…私の顔に、何かついてる?」
視線を感じて、可奈が想を見る。
「いえ、何も。
少しふっくらしてきましたね」
-かしゃん。
可奈がスプーンを置いた。いや、落とした?
「水原さん? どうしました?」
「どうしたじゃないよ! 普通、女の子にそういうこと言う!?
しかもパフェ食べてる最中に! 信じらんない」
どうやら怒らせてしまったらしい。
が、想には何を怒っているのかわからない。
「何か悪いことを言いましたか?」
「悪いに決まってるでしょ! せっかく美味しくパフェ食べてたのに、食べる気失せちゃったじゃない」
「何でですか?」
「何でじゃないでしょ、女の子が『太った』って言われて笑ってパフェ食べられるわけないでしょー!」
「太ってるなんて、一言も言ってませんよ」
「言ったよ!」
「言ってません。『ふっくらしてきた』と言ったんです」
「同じだよ」
「違いますよ」
可奈が信じられない、といった目で想を睨む。
「まさか水原さん、自分が太ってるなんて思ってないですよね」
対する想は目を見開いた。
「まあ…一応、標準だとは思うけどさ、でもあと2~3kgくらいしぼりたい」
「何言ってるんですか。今だってやせすぎなのに」
「気休めはいいよ」
「気休めじゃありません。どうして女性はそんなにやせぎすになりたいんでしょうね。
ぽっちゃりしている方が魅力的なのに」
想が理解できない、という顔をすると、可奈が上目遣いに睨んでくる。
「ホントにぃ?」
「本当ですよ。好みですから個人差があるでしょうけど、僕はそう思います」
ようやく可奈がにっこり笑った。
「燈馬君がそう言うならいいや。気兼ねなく食べようっと」
再びスプーンを取った可奈に、想も笑う。
「ぜひそうして下さい。怒らせてしまったお詫びに、次のおかわりは僕がごちそうしましょう」
「ホント? やったあ♪ すみませーんっ」
□あとがき□
無自覚バカップル(笑)。
-「可奈のタイムカプセル」妄想編-
悪いのは金丸。
それはわかってる。
けど、ヤツの言うとおり、私が辛島君や新田君のことを忘れていたのも事実だ。
はーっ。
とっても大事なものくれたのに。なんでこんなにバカなんだろう?
目頭がじんわりと熱くなる。
けど、泣いちゃだめだ。
泣く権利なんて、ない。
まばたきと共に落ちる涙-目を見開いて我慢していると、いきなり目の前が壁にふさがれた。
いや、この感触って…ええぇぇっ!?
「と、燈馬君…?」
顔を上げると、いつもよりも、燈馬君の顔が近い。
…これってやっぱり…抱きしめられちゃってるって状況だよね、勘違いじゃないよね!?
燈馬君は私のパニックをよそに、親指で目尻を拭う。
「昔と同じ水原さんでいてくれてありがとうって、きっと、そう思ってますよ。僕はそう思います」
燈馬君を笑顔を見たら、涙がボロボロとこぼれてきて止まらなくなった。
どれくらいそうしていたのか-気がついたら、燈馬君の鼓動を全身で感じていた。
-あー、落ち着くなあ…。
「落ち着きましたか?」
「え? あっ! ごごごごゴメンっ!」
声をかけられて、我に返った。
あちゃー、燈馬君の上着、明らかに色が変わってる部分が…。
「上着、濡らしちゃったね。ゴメン」
「すぐに乾きます。気にしないでください」
燈馬君は私から離れて、カバンを手に取った。
「じゃあ、帰りますね」
「何で! まだいいじゃん」
「いえ、そろそろ警部も帰るでしょうし」
「父さん? 今日は夜勤だから帰らないよ」
「そ…れは、ますます、失礼します」
「何? 父さんに用事があったの?」
「違います。とにかく、今日は帰ります」
んー? 急に燈馬君の挙動が不審。どうしたんだろ?
「また明日」
…でも、いっか。明日も会えるもんね。
「うん。玄関まで送るよ」
「ありがとうございます」
門まで燈馬君を送りながら、まだお礼を言ってなかったことを思い出した。
「いろいろありがとね」
「いえ」
「じゃ、また明日。学校でね」
「はい。お邪魔しました」
燈馬君は、一礼して帰っていく。
「カシャ」
手でファインダーを作って、口でシャッターを切った。
空(くう)に切り取った後姿を、大事に胸にしまい込む。
-一生、忘れることのないように。
□あとがき□
燈馬君のマンションから可奈ちゃん家に行くことが増えたのは、燈馬君が2人きりでいることに自信がなくなったんじゃないか!? という妄想から。
ドラマのセリフはうろ覚えです。
つか、「忘れて欲しくなくてプレゼント(餞別)を贈る人もいるだろう」と、腑に落ちなかったので割愛しました(大人気ない)。